日本酒地理的表示「GI静岡」が指定されました。
GI静岡
日本酒の地理的表示(GI認証)の16例目として、「静岡」が、令和5年11月30日に指定されました。
酒類の特性について
静岡の清酒は、総じて含まれる酸が少なく、淡麗で穏やかな旨味を感じることのできる、きれいで丸みのある酒質で、バナナ様を基調とした穏やかな香りや、純米吟醸酒や吟醸酒ではメロンなどの果実香を感じることができます。
また、やわらかい口当たりとスッと引くキレの良い余韻が両立し、呑み飽きせず食材の特徴を引き立て続ける食中酒に適した酒です。
淡麗で穏やかな静岡の清酒は、新鮮なカツオ・マグロの刺身や生シラスといった、この地域の豊かな魚介類との相性がとても良い酒質です。
気候風土
静岡県は日本のほぼ中央に位置し、東は熱海から西は浜松まで約155㎞にわたる東西に長い地形です。北部には富士山、赤石山脈、伊豆半島には標高約天城山がそびえ立っており、これらの山々に蓄えられた水が、富士川をはじめ大井川、安倍川、天竜川、狩野川といった河川がもたらす豊富な伏流水や富士山の湧水は総じて軟水であり、これらの水を醸造用水として使用することによって、静岡の清酒の特性である淡麗で丸みのある酒質の清酒を醸し出しています。
歴史と人的要因
この地域の酒が庶民にも広く親しまれるようになったのは江戸時代からで、江戸開府により東海道の往来が盛んになり、さらには古来から霊山れいざんとして信仰の対象となっている富士山や、日本三大松原であり名勝三保松原への多くの人の流れが出来た事によります。
静岡県は東海道五十三次のうち22もの宿場町を有し、その宿場町を中心に、往来客をもてなすため、海で採れた地場の食材に寄り添う地酒造りが盛んになりました。その為、この地域の酒造場のほとんどが県南側の海岸地域の旧東海道沿いに点在しています。
酒造りを支えたのは、大井川河口の志太平野を本拠とする杜氏集団の志太杜氏です。湿田が多く冬場に作物の作れない志太平野南部の農家や、冬の駿河湾の海が荒れて漁に出られない漁師達が、出稼ぎのため県内の酒造りに携わりました。冬も温暖な気候に適した志太杜氏の酒造りの流儀は、現代も継承されています。
現代の静岡の日本酒誕生
高度成長期を過ぎ、清酒の消費量が減少に転じてきた昭和50年代になると、品質向上による需要創出が急務となりました。静岡県工業技術研究所沼津工業技術支援センター(以下「県試験場」と表記)では、静岡の気候と水に適した高品質な清酒(吟醸酒)の製造を目標に、県試験場の故河村伝兵衛氏が中心となり、県内酒蔵有志との研究開発によって、バナナ様の香りを生み出す新酵母、いわゆる「静岡酵母」の開発に成功しました。
更に、同氏は単に酵母の開発にとどまらず「淡麗で穏やかな旨味を感じる丸い酒」という独特な酒質の方向性を示すとともに、県全体としての技術力の向上を図るため、静岡酵母に適した麹の造り方や発酵管理、原料米の洗い方に至るまで妥協を許さない徹底した技術指導を行いました。
静岡県清酒鑑評会においても、県試験場が指導する酒質を品質審査方針に取り込み、静岡らしさを象徴する酒質の方向性が確立することとなりました。その結果、昭和61年開催の全国新酒鑑評会においては、県内から21蔵が出品し17蔵が入賞、うち10蔵が金賞を受賞して以来、全国から注目を集めるようになり、静岡酵母と静岡の水で醸される酒は「静岡吟醸」と呼ばれ、「吟醸王国静岡」と称される程の評価を得るまでに至りました。
原料及び製法
原料としては、米及び米こうじに、3等以上に格付けされた玄米又はこれに相当する玄米を精米した国内産米のみを用いていること。
静岡県内で採水した水のみを用いていること。
発酵に用いる酵母は、静岡酵母とする。ただし、管理機関が指定した酵母についても静岡酵母と併用する場合のみ使用できるものとする。
酒税法に規定する「清酒」の原料を用いたものであること。ただし、清酒の原料のうち、アルコールは、米(こうじ米を含む。)の重量の100分の10を超えなる量での使用はできません。
製法としては、静岡県内において製造、貯蔵、容器詰めすること。
管理機関
管理機関の名称:静岡県酒造協同組合
住所:静岡県静岡市葵区清閑町4番18号
電話番号:054-255-3082
ウェブサイト:https://www.shizuoka-sake.jp
地理的表示「静岡」を使用するためには、これを使用する清酒の製造場から出荷するまでに、各規定について管理機関が作成する業務実施要領に基づいて確認を受けなければなりません。
「発酵に用いる酵母」の管理
発酵に用いる酵母については、その特性が変化しないよう、業務実施要領に基づき管理機関が管理を行う。
(注)地理的表示「静岡」の指定以前から使用していた「静岡・しずおか」の商標等の表示は、地理的表示「静岡」の指定後も、引き続き表示が認めれれている物があります
(Text : 山路 日出夫)
この記事の筆者
日本ツーリズム運営局(オフィスイチヤマ)
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