日本酒は意外とデリケート。正しく保管して美味しく飲みましょう。

日本酒(清酒)の保管について

日本酒を売っているお店の店頭で、日本酒が陽の当たるところで売られていたりするのを見ると、日本酒は保管にあまり気を使わなくても良いお酒だと思っていませんか？でも、ワインだったらどうでしょう。多分日向に置かれているワインは誰も買いませんよね。実は日本酒も基本的に同じ扱いをすることが望ましいのです。

一般に日本酒は「火入れ」と云う熱による殺菌を行うことで、酵母の働きや酵素の働きを止めてから出荷されるので、室温で保管しておいたから腐ってしまうと言うものではありませんが、扱い方を誤ると風味を劣化させてしまうことがあります。日本酒は、ビールやワインと同じく醸造酒なので品質が劣化し易く、保管には十分気を付ける必要があります。ここでは代表的な日本酒の劣化パターンと保管方法を紹介していきます。

 

 

日本酒(清酒)の劣化

日光による劣化

・日本酒は日光などの紫外線の光に弱く劣化するので、日向に置くのは厳禁です！（上の写真は最悪ですね）ですから、日本酒の瓶は、紫外線を多少なりとも防ぐ様に茶色などに着色してあるものが多く見られます。日本酒は日光に晒されると紫外線の作用により短時間で茶色っぽく着色してしまいます。特に酷いものは日光臭（焦げた様な臭い）を生じて、飲めなくなってしまいます。

お店で買うときは

日本酒を買い求める際には、お店の中でどこに置かれているかを注意しましょう。陽のあたる棚などに並んでいるものは避けるべきです。そもそも、お酒をその様に無造作に扱うお店で買うのは避けたほうが良いでしょう。店の奥の棚に有れば、まず合格と言えますが、証明の蛍光灯も紫外線を発するので、棚の上の蛍光灯に近い商品は避けたほうが良さそうです。

吟醸酒や大吟醸酒・生酒など風味が変わりやすい商品は冷蔵ケースで保管されて販売されている事が多いですが、店頭の冷蔵ケースにも注意が必要です。それは、先に説明しました様に、冷蔵ケースに使用されている蛍光灯も紫外線を発生しますので、冷蔵ケース内では特に商品と近距離で蛍光灯に晒されている事になるので、日光に晒されているのと同じ様に劣化してしまいます。保管に気を使っているお店では蛍光灯を消灯したり、紫外線を発生しないLEDなど特殊な照明を使用していますから、お店選びの参考にしてみてください。

瓶の色による違いはあるの？

日光に強く晒してしまえば同じですが、瓶の色によって影響の度合いが異なります。透明や青色が一番影響を受け易く、茶が一番影響を受け難くなります。また、最近では紫外線避けのフィルムを巻いているものもあります。見栄えは良くないかもしれませんが、紙パック(特に内面がアルミコーティングされているもの)やアルミ缶などの容器に入ったものが一番影響を受けにくいのです。また、イラストの描いてあるアルミコーティングの袋や新聞紙が巻いてあるのも、デザインだけではなく日光の影響も配慮した包装なのですね。

日本酒(清酒)の温度による劣化

日本酒は温度によっても劣化します。今ではヨーロッパでもファンが増えつつある日本酒ですが、以前は日本酒は臭くて不味いイメージがあったそうです。輸出されていた商品の品質にもよりますが、ヨーロッパに船便で送るにはコンテナに詰められて赤道を⒉回も越えてヨーロッパに届くわけです。その際のコンテナの内部温度は60℃にもなると言われますから、その為に風味が変わってしまったのだと思われます。

温度の高い状態で長く保管すると老香（ひねか）と云う匂いを生じます。これは少し老酒の香りに近い熟した匂いで、好き嫌いはあるかもしれませんが、一般には酒質の洗練性を損なうものとして酒造上避けられています。ただし、火入れされたお酒を管理した良い状態の常温で保管し熟成させ、熟成酒や古酒をつくる手法もあります。

ただし、製造過程の最後に行われる上槽後の処理によって劣化の影響は異なるので、これを解説します。

普通酒・本醸造酒・純米酒など

これらのお酒は、日常の晩酌などで飲まれる事が多いので、品質を維持しやすい様に⒉回火入れ（加熱殺菌）されているものが多いです。2回火入れされたお酒は通常の室温程度であれば、それほど保管に神経質になることはありません。但し当然、日光の影響や高温は避けないといけませんが。長期間香味の変化をさせない様に保管する場合、火入れされた清酒で未開封の物の場合15℃位で保管するのが望ましいでしょう。ただし、このグレードのお酒でも生酒（火入れされていない）もありますので、その場合は後で説明しますので、それを参考にしてください。

吟醸酒・大吟醸酒など

これらのお酒は、醸造の段階で特別な造りでお酒を造る事で、特有のフルーティーな香りを出していますから、火入れを行なっていてもきちんと保管をしないと香味が劣化してしまいます。その為、通常の保管は、火入れされた未開封の物の場合は15℃位で保管するのが望ましいでしょう。長期間保管する場合は必ず冷蔵庫などで5℃以下で保管しましょう。

生酒

生酒は、火入れしていない（非加熱殺菌）清酒は、酵母や酵素が生きている為、この作用で酒質が大変変化しやすいお酒です。ですから保管する際には冷蔵庫などで１〜５℃で保管する必要があります。但しこの温度でも少しずつ香味は変化して行きます。基本的に生酒はフレッシュな味わいを楽しむお酒なので長く貯蔵する事はお勧めできませんので、購入したら早く飲み切る方が良いでしょう。

このようにデリケートな生酒、は開封するとさらに香味の変化が大きくなり、フレッシュさや香りが失われ、味わいも変わってゆきます。開封後は１〜５℃の冷蔵庫で保管すると共にさらに早く飲み切った方が良いでしょう。冷蔵庫のパーシャル室（-3℃〜-5℃で設定できる）を利用すると、開封後の香味の劣化を抑えることができます。ただし、日本酒のキャップの多くは金属製なので、寝かせて保管する事は、漏れやキャップのサビの発生につながるので、気をつける必要があります。

 

 

日本酒(清酒) 香気成分の揮発

吟醸酒や大吟醸酒のフルーティーな香りである吟醸香などのの成分は揮発性が高い性質があります。ですから、この成分が揮発してしまうと、せっかくの吟醸香が飛んでしまう為、開栓後は早めに飲み切りましょう。飲み残した場合は、ボトルのキャップを空気が入らない様にしっかり締めて、先に説明しました様に冷蔵庫で保管します。その際に、ワイン用のバキュームポンプで空気を抜いて栓をすると多少効果があります。

 

日本酒もワインの様にワインクーラーで保管したほうがよいの？

ワインクーラーは、13℃くらいに温度が管理できて、紫外線を防ぐガラスで守られているので具合は良いのですが、日本酒のボトルの栓はワインの様にコルクを使用している訳では無いので、瓶を寝かせて保管する必要はありません。むしろスクリューキャップを使用しているものが多いので、瓶を寝かせるとキャップ内部が錆びる恐れもあるので、ワインクーラーで保管する場合は、一番下の段などで瓶は立てて保管しましょう。