日本酒・清酒について知る
・日本酒の歴史は稲作の伝来と共にに始まったものと思われ、2000年以上も前から造られていたと考えられています。しかし、この頃のお酒はお米を原料にしていたものの、現在と造り方は異なり生米を口に含んで噛み唾液で糖化させて、それを吐き出したものを発酵させる方法をとっており「口噛みノ酒」(クチカミノサケ)と呼ばれていたようで、出来上がったお酒は神様に捧げられました。その後、奈良時代には現在のようにカビを用いて米を糖化させて発酵させる手法が行われるようになりました。この頃には宮中で神事のためにお酒が造られる様になっていました。今でも神社で執り行われる神事にお酒は欠かせませんよね。この様に日本酒は神様に捧げる神聖なものとして造られ、これが高貴な人へ、そして庶民へと広がってゆきました。
・昔の日本酒は今の様に透き通ったお酒では無く濁った、いわゆる「どぶろく」が一般的でした。今で言う清酒「すみ酒」は神事や一部の上流階級への贈答品などで使用されていた様です。また、焼酎が造られたのは16世紀に入ってからなので、日本酒と言えば「どぶろく」か「清酒」であったのです。しかし日本酒という言い方が使われるのは明治維新以降の事になります。
日本酒の定義
・「日本酒」という呼称は、明治時代にビールやワイン等が輸入される様になった為、それと区別する為に使用される様になりました。
・江戸時代以前には「清酒」(澄み酒)や単に「酒」と呼ばれていました。
・「GI(Geographical Indication):国レベルの地理的表示」において、H27年に、原料米として日本国内産の米のみを使用して日本国内で製造された「清酒」が「日本酒」として指定されました。
清酒の定義
・「清酒」の定義(酒税法における定義)は、米、米麹及び水を原料として発酵させて濾したもの(アルコール度数22度未満)※とされています。
※:あるいは、米、米麹、水及び清酒かすその他政令が定める物品を原料として発酵させて濾したもの(アルコール度数22度未満)。
日本酒の歴史
1.古代(〜8世紀)
2.奈良時代(8世紀)
3.平安時代〜室町時代(9世紀〜15世紀)
4.室町時代〜安土桃山時代(15世紀〜17世紀)
5.江戸時代(17世紀〜19世紀)
6.明治・大正時代(19世紀〜20世紀)
7.昭和時代〜(20世紀〜)
1.古代(〜8世紀)
・ 日本酒の起源は古く、遠く弥生時代に稲作が伝来し、米による酒造りが始まったと思われますが当時の記録が乏しく、原料や手法ははっきりとは分かっていません。
・ 古代の酒は宗教と強い関わりが有り、酒造りは巫女の仕事であったと言われています。
・ 古代の酒の製法は、生米を口に含んで容器に吐き出し、唾液中の酵素を利用して米のデンプンを糖に分解し、空気中の自然酵母で発酵させるという方法だったと思われます。
2. 奈良時代(8世紀)
・ 奈良時代になると、麹カビを利用して米のデンプンを分解する方法が生み出されます。これが現在の酒造りのルーツと考えられます。日本の酒造りで用いられる麹カビは、同じく麹カビを用いるアジア各地と異なり米麹を用いるのが特徴になっています。
・ 奈良時代には神事と政治は密接な関係になっており、朝廷の行事に使用する酒を造る、造酒司(みきのつかさ)と云う役所が設けられていました
・ 奈良時代の造酒司(みきのつかさ)跡の出土品から、奈良時代には既に清酒(濾した酒)が造られていたと考えられます。
3.平安時代〜室町時代(9世紀〜15世紀)
・ 平安時代には、寺院で僧侶が造った酒「僧坊酒」(そうぼうしゅ)が名声を得ます。代表的なものに、大阪河内の天王山金剛寺で造られた「天野酒」(あまのざけ)や奈良の菩提山正暦寺で造られた「菩提泉」(ぼだいせん)などが有ります。
4.室町時代〜安土桃山時代(15世紀〜17世紀)
・室町時代になると商業ベースでお酒が造られる様になり、都である京都を中心に酒屋が多く出来ました。お酒の名前「酒銘」が付けられるのもこの時代からです。
・現代の酒造りにつながる、安全に醪を発酵させる方法である段仕込みや火入れによる加熱殺菌方法が用いられ始めました。
5.江戸時代(17世紀〜19世紀)
・ 江戸時代には、火入れによる加熱殺菌方法が一般化し、年中品質が保てることになった事から、酒造りに最も適した時期である冬に酒を造る「寒造り」が始まりました。
・ 江戸時代には、火入れによる加熱殺菌方法とともに、安全に醪を発酵させる方法である段仕込みが一般化しました。また醪の腐敗を防ぐ技術として、「柱焼酎」(はしらじょうちゅう)と云うアルコール添加も始まりました。
・ 江戸時代になり、米をよく知る農民が農閑期の出稼ぎとして酒を造る、「杜氏」を頭領とする酒造りの仕組みが出来ました。
・ 江戸時代には清酒(澄み酒)が一般化し、伊丹や灘の酒が江戸で「下り酒」として評判を得、日本酒の最大の生産地になりました。
6.明治・大正時代(19世紀〜20世紀)
・ 明治時代には、酒税が国の歳入の多くを占める様になるに伴い酒税強化が図られ、自家醸造酒の製造と自家消費が禁止になり、「どぶろく」が衰退しました。
・ 明治時代になって、酒造技術の向上を目指し「国立醸造試験場」(現在の独立行政法人 酒類綜合研究所)が設立され、山廃酛や速醸酛の技術が開発されました。また、優良な蔵元の酵母を採取・純粋培養し、醸造協会(現在の財団法人 日本醸造協会)から全国の蔵元に配布する事も行われる様になりました。
7.昭和時代〜(20世紀〜)
・ 太平洋戰爭後の米不足を補う為、三倍醸造(三増酒)の製造が認められる様になりました。
・ 酒税法の改定により級別審査が始まりました(昭和18年)。
・ 級別審査の廃止(平成元年)に伴い、特定名称酒が一般化しました。
・ 昭和50年頃をピークに日本酒消費量は減少し、現在はピーク時の1/3程度になっています。
日本酒の種類
日本酒は大きく、特定名称酒と普通酒に分けられます
・特定名称酒は次の8種類に分類され、ここに含まれないものが普通酒に分類されます。
特定名称酒
特定名称 | 使用原料 | 精米歩合 | 麹米使用率 |
吟醸酒 | 米・米麹・醸造用アルコール* | 60%以下 | 15%以上 |
---|---|---|---|
大吟醸酒 | 米・米麹・醸造用アルコール* | 50%以下 | 15%以上 |
純米酒 | 米・米麹 | 規定なし | 15%以上 |
純米吟醸酒 | 米・米麹 | 60%以下 | 15%以上 |
純米大吟醸酒 | 米・米麹 | 50%以下 | 15%以上 |
特別純米酒 | 米・米麹 | 60%%以下又は特別な製造方法(要説明表示) | 15%以上 |
本醸造酒 | 米・米麹・醸造用アルコール* | 70%以下 | 15%以上 |
特別本醸造酒 | 米・米麹・醸造用アルコール* | 60%%以下又は特別な製造方法(要説明表示) | 15%以上 |
*:特別名称酒では醸造用アルコールの添加量(アルコール分95度換算の重量)は、白米重量の10%以下に制限されている。
様々な特徴による日本酒の種類
名称 | 特徴・解説 |
生酒 (なまざけ) |
醪(もろみ)を搾っただけのお酒で火入れ処理をしていないので、フレッシュな味わい。炭酸を含むものもある |
---|---|
生貯蔵酒 (なまちょぞうしゅ) |
醪(もろみ)を搾りたてのまま低温で貯蔵し、出荷前に一度だけ火入れしているので、生の風味が残っている |
生詰め酒 (なまづめしゅ) |
醪を搾ったお酒を一度火入れしてから約半年ほど貯蔵熟成し、二度目の火入れをせず出荷したもの。「ひやおろし」「秋晴れ」「秋上がり」などとも呼ばれる |
生一本 (きいっぽん) |
自社蔵の一つの製造場だけで造った純米酒 |
原酒 (げんしゅ) |
醪(もろみ)を搾った後、水を加えてアルコール度数を調整していないもの。アルコール度数が高く濃醇 |
長期熟成酒 (ちょうきじゅくせいしゅ) |
“日本酒は通常半年から一年熟成させるが、それ以上の期間熟成させたお酒で、甘い熟成香とまろやかな味わい。色調は淡い琥珀色からルビー色まである。 |
熟成古酒 (じゅくせいこしゅ) |
3年以上蔵元で熟成させた、糖類添加酒を除く清酒(長期熟成酒研究会) |
樽酒 (たるざけ) |
木製の樽で貯蔵し、木の香りがついたお酒 |
発泡酒 (はっぽうしゅ) |
炭酸ガスを含んだ、シャンパンの様な口当たりのお酒 |
awa酒 (あわさけ) |
醸造中の自然発酵に依る炭酸ガスを含有する純米酒で、アルコール度数10%以上、ガス圧が0.35Mpa以上等の条件を満たして認定されたもの。((社)awa酒協会) |
滓酒 (おりざけ) |
醪を搾った後、タンクの底に沈殿した滓を含んだ白く濁ったお酒 |
にごり酒 (にごりざけ) |
醪を粗い目の布で濾しただけの白く濁ったお酒で、火入をしていない |
(濁酒) どぶろく |
日本酒同様に米を発酵させて作るが、醪を濾していない状態で商品化されたお酒で、酒税法上は「その他醸造酒」に分類される |
日本酒の製法
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この記事の筆者
日本ツーリズム運営局(オフィスイチヤマ)
日本ツーリズムは日本酒に対する潜在的な需要を発掘すると共に、日本各地の蔵元さんとユーザーをつなぎ、日本酒で地方を元気に、そして日本を元気にして行くと共に、世界へ日本酒の魅力を発信していくことを目指して行きます。
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