日本酒地理的表示 GI利根沼田が指定されました。
GI 利根沼田
日本酒の地理的表示(GI認証)の6例目として、「利根沼田」が、今年1月22日に指定されました。
利根沼田地域は群馬県の北部にあり、北部の武尊山・谷川岳を中心とする三国山脈と、南部の日光白根・赤城・浅間等の火山に囲まれた所にあります。
酒質の特性
透明感のある味わいの中に、適度な旨味を感じる味わいが特徴です。具体的には、爽やかな酸味や旨味を伴ったコクを与える苦みを感じますが、その後に、当地産原料米特有のまろやかな旨味や甘みが膨らみます。またアルコール感の切れが良いので、アルコール度数の割にアルコール感を感じず、透明感がある味わいになっています。
香りは、つきたての餅のような米由来の香りの他、酵母由来のグレープフルーツ、白桃、黄色いリンゴ、バナナ、メロンやライチを中心とする果実様の香りに加え、杏仁豆腐様の風味、青草や新緑を連想させる香りも感じられます。
色調は、透明感のある淡いゴールドがかったクリスタルが基調となっています。
余韻で感じる締まりを与えるほのかな苦みにより、苦み・旨味や酸味を中心とする味の食材との相性がよく、当地で収穫される、蕗のとうやタラの芽などの春野菜と相性がとても良く感じます。また、利根沼田の清酒由来のアミノ酸は、当地の特産品である畜産物(豚肉、牛肉、鶏肉)を用いた料理の動物性タンパク質由来の旨味と相まって料理の味を引き立てます。
気候風土
産地の範囲である利根沼田地域は、約15万年前に存在した「古沼田湖」に土砂が堆積してできた場所にあります。武尊山や谷川岳などの雨や雪どけ水が、この湖底に堆積した砂礫・泥礫層を通った水は、豊富な川水及び伏流水をもたらしています。水質は軟水で、利根沼田の清酒に透明感のある味わいや色調を与えています。
気候は、冬には季節風を伴ってしばしば雪や雨が降り、寒さが厳し一行きです。この冬の厳しい寒さは、酒造りの環境に適しています。この地域は群馬県の中では降水量が多く、米の生育期には日照時間も長いうえ一日の中での寒暖の差が大きいので、この地域では豊満で登熟が良好な酒造に適した米が生育します。また、豊富な水を田に張ることができるため、酷暑でも品質の良い米の安定した収穫ができます。
歴史と人的要因
当地で本格的な清酒造りが行われるようになったのは江戸時代に入ってからと言われています。文化6年(1809年)には酒造屋が26軒あった事が記録されていて、「酒師仲間」を結成していました。古くから越後杜氏を中心として酒造が行われていましたが、現在では全ての酒蔵において蔵元杜氏・社員杜氏の体制に移行し、地域内の杜氏同士での定期的な情報交換等や研究が行われるようになり、利根沼田の清酒の特性が一層明瞭になってきました。
特に、利根沼田特有の酵母の開発や、この酵母に適した米作り、酒造りのノウハウの研究・蓄積を通じ、酒質の維持・向上に努めています。
原料及び製法
原料の米及び米こうじには、産地の範囲内において収穫された、雪ほたか(株式会社雪ほたかにおいて、「雪ほたか」の商標を付すにあたり、同社の定める基準等を満たし、「雪ほたか」の商標が付された米をいう)もしくは、五百万石、コシヒカリのみを用いること。水は、産地の範囲内で採水し、沈殿及び濾過以外の物理的及び化学的処理を行っていない水のみを用いること。発酵に用いる酵母には、群馬KAZE酵母、群馬G2酵母、産地の範囲内において採取及び培養した酵母(蔵付き酵母)のみを用いること。その他原料は、酒税法で規定された「清酒」のもの以外は用いることができないものとし、水の代わりに清酒を用いる場合には、上記の原料によってのみ製造された清酒を用いることとなっています。
製法としては、上記の製造方法で清酒として「利根沼田」の産地の範囲で製造し、貯蔵、瓶詰めもこの範囲内で行うこととなっています。
管理機関
GI利根沼田協議会 (大利根酒造 内)
管理機関は、GI利根沼田の原料として規定する「発酵に用いる酵母」について、その特性が変化しないよう管理を行います。
地理的表示「利根沼田」を使用するためには、これを使用する清酒の製造場から出荷するまでに、各規定について管理機関が作成する業務実施要領に基づいて確認を受けなければなりません。
(Text : 山路 日出夫)
この記事の筆者
日本ツーリズム運営局(オフィスイチヤマ)
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