「お米を磨く」ってどういう事? 日本酒用精米機で有名な新中野工業さんを訪ねて伺ってきました! 【 前編 】
まづはお酒造りにおける精米について少しばかり説明を…。
現代のお酒は諸白つくり
日本酒はお米を原料に造りますが、現代のお酒は麹米も掛け米も精米した白米で醸造する諸白つくりです。江戸時代以前の昔はお米を精米するのは大変でした。ですから昔は、麹米・掛け米の片方だけを白米で仕込む片白つくりが一般的だったようです。
昔はどうやって精米していたのでしょう?
お米を精白するには、昔は石臼に籾殻を入れて人力で足踏み精米を行なっていました。ですから当時の記録から推定すると、白米とは言っても現代のご飯の白米(精米歩合90~93%)よりずっと玄米に近い97%くらいであったそうで、そのうえ人手も掛かりますから造り酒屋さんには「硯屋」と呼ばれる専門の職人グループが居ました。
しかし、江戸時代の灘目(現在の灘五郷、兵庫県神戸市海沿いの東部から西宮市にかけての酒造地帯)では背後の六甲山の急流を利用した水車精米が行われたので、それにより遥かに高精白の75%前後であったそうです。そのため当時としては雑味の少ないスッキリ辛口のお酒を造ることが出来ました。それが江戸の人たちの人気を得た事と、精米の生産性が飛躍的に向上したので大量のお酒の生産が可能になった事が、灘酒が発展した要因の一つとされています。
この様に、お酒の原料であるお米の前処理によってお酒の品質や味わい、更には生産性まで影響してしまうんですね。
どうして酒米の精米するのでしょうか?
お米の表面には籾殻が有るのはご存知の通りですが、籾殻を取り除いた状態が玄米になりますね。お米は胚芽と表面付近はタンパク質や脂質、灰分などの栄養の多く含まれています。でもこのままだと発酵が強くなり良い酒質のお酒を造るのが難しく、いわゆる綺麗なお酒を造るのには向かない為、お米をさらに削ってゆく必要があるのです。特に大吟醸酒や純米大吟醸酒ではお米を半分以上削ってしまいます。逆に削る量を少なくする事で味わい深い個性のあるお酒にもなるわけです。
よく耳にする「精米歩合」とは、お米を削った残りの割合のこと
お酒の説明をしてもらうと、よく「精米歩合」という言葉を聞く事がありますが、これは精米した結果残ったお米の部分になります。ですから削った部分は糠(ぬか)になります。ここはお酒造りには使いません。
糠は表面から近い部分から赤糠、中糠、白糠、上白糠と呼ばれ、赤糠と白糠は飼料や漬物用に、白糠と上白糠は米粉とも言われ下の絵ですと胚乳の部分も削ってゆきます。これらはお菓子づくりなどに利用されています。
精米歩合(%)=精米後のお米の重さ➗玄米の重さ✖️100
【 ひとこと 】日本酒のラベル表示にはありませんが説明の中で時々使われる、「精白率」は精米歩合とは逆で削った分を言います。なので、「精米歩合が低い」は「高精白」となります。ややこしいですが … 。
お米の種類によっては精米歩合を低くするのはムヅカシイ!
酒米、特に酒造好適米の中心付近には心白というお米を透かして見たときに白く濁って見えるデンプン質の粒密度の粗い部分が有ります。心白が有ると麹菌が中心まで入りやすく良い麹ができますが、その一方心白の部分は脆く割れてしまうので高精白には向かないというわけです。
例えば代表的な酒造好適米である「山田錦」はもちろん心白ができますが大き過ぎないので高精白に向いていますが、その一方でこれも有名な酒造好適米の「雄町」は心白が大きく割れやすいので高精白には基本的には向きませんが融けやすく、杜氏さんはそのお米の特性に合わせて個性のあるお酒を造っているのです。 ( Text:山路日出夫)
《後編に続く f^_^; ) 》
この記事の筆者
日本ツーリズム運営局(オフィスイチヤマ)
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