幻の米イ号で醸した日本酒「イ号彌太右衛門」

イ号彌太右衛門とは?

イ号彌太右衛門は、80年間途絶えており幻の米となっていた「イ号」米を原材料として生酛造りで醸された特別純米酒です。

イ号彌太右衛門

30BY イ号彌太右衛門

庄内の三大民間育種家

当時、山形県庄内地方では米の民間による品種改良が盛んであり、数多くの品種を開発し三大民間育種家と称された、佐藤彌太右衛門氏、阿部亀治氏、工藤吉郎兵衛氏らがいました。開発された品種としては「亀の尾」や今は会津地方で作られている酒米「京の華」などがあります。

イ号米とは

原材料「イ号」米は、明治40年(1907年)にその三大育種家の一人である佐藤彌太右衛門氏により開発された品種です。いもち病への耐性や食味の良さで、最盛期には県内で最多の作付け面積を誇りましたが、他の新品種に押され昭和14年(1939年)を最後に作付けされなくなり途絶えてしまっていましたが、平成29年(2017年)に佐藤彌太右衛門氏ゆかりの山形県三川町が町興しの一環として地元の農家と共に復活に取り組みました。

復活に取り組み始めた平成29年に、山形県農業試験場に保管されていたわずか50gの種もみを譲り受け、三川町の農家大瀧浩幹氏が育成に取り組み翌年5kgを収穫。そして平成30年には7~800kgの収穫を行いやっとお酒の仕込みができる量を収穫する事ができました。

H30BY イ号彌太右衛門

H30BYには、この年に収穫されたイ号米を原料米としてお酒が造られました。それがイ号彌太右衛門です。この長らく途絶えていた米でお酒を醸したのは隣町の鶴岡市大山で凡そ400年続く老舗酒蔵の渡會本店。イ号が栽培されていた最盛期を偲べる様に生酛造りの純米酒でとして醸されています。

このお酒は醸造初年度という事もあり限定1000本の生産であった為、既に蔵元には在庫が無いとの事で、庄内の酒販店には未だ少し在庫が残っているかもという状況だそうです。来年度は原料米の作付け面積も倍に増やすので、もっと手に入れ易くなるはずです。

さてお味は?というと、麹様のふくよかさを感じるやや甘い香りとカッテージチーズを思わせるの酸味がかった香りに干し椎茸の様な熟成と旨味を感じる上立ち香(トップノート)。口に含むと、厚みのある酸を感じるしっかりしたテクスチャーで、クルミをイメージする熟成感や干し椎茸の様な旨味を感じる味わい。余韻はやや長い。といった感じ、個性的ですが飲みやすい、食中酒にも向くタイプのお酒でした。SSIの4タイプ分類では醇酒やや爽酒寄りでしょうか。(以上私感)
今回は花冷え〜涼冷え(10℃〜15℃)くらいで味わいましたが、燗をつけても美味しかったかもしれません。ちょっと惜しいことをしました。
(text:山路日出夫)

この記事の筆者

日本ツーリズム運営局(オフィスイチヤマ)

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